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2-4 飲み過ぎに注意

  • 執筆者の写真:  Travel to Face
    Travel to Face
  • 12 時間前
  • 読了時間: 6分

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2-4「飲み過ぎに注意」の始めに


旅奈と日本酒への旅に出かける前に飲酒についての豆知識です。


日本健康21(厚生労働省)では節度ある適度な飲酒量は、純アルコール約20g/日程度としています。これはビール約500ml、日本酒約1合、ワインのグラス約2杯分に含まれる純アルコールの量になります。また1日に平均で男性40g、女性20g以上の純アルコールを摂取すると生活習慣病のリスクが高まるとしています。

この数値に個人差はありますが、一般的に女性の飲酒は男性に比べて健康へのリスクが高まります。


長期間におよぶ多量のアルコール摂取は、脳を含め様々な臓器に悪影響を及ぼします。また、アルコールは胃より小腸で急速に吸収されます。空腹で飲酒を行うとアルコールはすぐに小腸に届き、結果、血中のアルコール濃度が急速に高まります。


殆どのアルコールは肝臓内の酵素で分解されてアセトアルデヒドになります。これが顔面の紅潮や頭痛の原因となり強い毒性があります。そして肝臓内の別の酵素がアセトアルデヒドを分解します。この二つの酵素の能力の個人差が「お酒が飲めない」「お酒が飲める」「お酒は飲めるが本当は弱い」を決めます。


詳しい説明は省きますが、酔ったように見えないからと言って過信はできません。また飲めるようになった人も元からの体質に起因するリスクは残っています。そしてお酒が飲めない体質の人に無理強いはできません。


お酒は古代から全世界で飲み繋がれ、人類の歴史の一部に関わってきました。そして今も人のつながりを助けてくれます。

飲み過ぎと常習的な飲酒は控えて、適度なお酒と楽しい時間を過ごしましょう。


最後に世界保健機構(WHO)は、飲酒は特定の癌の発生リスクを高めると結論づけています。お酒は二十歳になってから、そのリスクとメリットを理解した上で楽しみましょう。


参考図書 日本酒学講座(初版) 第7章日本酒と健康 新潟大学日本酒学センター

参考 HP アサヒビール 人とお酒のイイ関係




2-4 飲み過ぎに注意


初めて買った日本酒をトートバッグに入れて自宅のアパートに帰ってきた。

ここで一人暮らしを始めてから5年が経つ。

この部屋に日本酒と一緒に帰ってくるとは思わなかった。


冷蔵庫の中のありあわせで焼うどんとサラダを作り、夕食を済ませた私は机に向かって携帯の電源を入れた。


そうだ、買ってきた日本酒を飲んでみよう。

帰ってすぐに冷蔵庫に入れた日本酒と透明のダンブラ-をキッチンから持ってきて机の上に置いた。

ラベルに描かれた羽に頭を埋めた丹頂鶴、私にはそう見える、それは何も語りかけてはこない。丹頂鶴の絵の下には「仙禽ナチュール 2025ヌーボー 2024ライスヴィンテージ」の文字。

「丹頂鶴さん、あなたはどんなお酒?」

その時、丹頂鶴の赤い頭が何かを言おうとした。

「日本酒を飲むときはいっしょに必ず何かを食べて下さい。日本酒と同じ量の水を飲むと悪酔いしませんよ」

やさしい酒屋さんが言っていたのを思い出した。

わたしは慌ててキッチンに行ってマグカップになみなみと水を注ぎ、それを机の上に並べた。

「一緒に食べるものは無いけど、さっき夕食を済ませたばかりだから大丈夫よね」

ラベルの丹頂鶴は黙っている。

冷蔵庫から出したボトルは汗をかき、机の上が濡れている。

私は携帯電話をサイドテーブルに置き、ボトルの栓を開けた。


タンブラーに1cmほど日本酒を注いだ。

甘酸っぱいフルーツの様な香りがする。

恐る恐る少しだけ口に含んでみる。

「美味しい」

「やさしい酸味と甘みが幸せな気分にしてくれる」

「後味もとてもいい」

タンブラーに注いだ日本酒を全て口の中に流し込んだ。


日本酒って、みんなこんなに美味しいの?

ラベルの丹頂鶴が喜んでいるように見える。


私は机の上にあるパソコンに”日本酒”と打ち込んだ。

日本酒の説明や日本酒の販売に関するものが一気に表示された。

次に”生酒”と打ち込んだ。

生酒を説明するサイトが並ぶ。

私は日本酒を注いだタンブラー片手に幾つかのサイトに書かれている生酒の説明を読んでみた。分かったことは ”火入れを一度もしていないお酒” だということ。でも”火入れ”が分からない。火入れを調べたら今度は酵母や酵素が出てきた。これはもっと難解だ。真剣に読まないと頭に入ってこない。そんな時、酒母に行き当たり、その説明の中に”生酛”を見つけた。これは今飲んでいるボトルの裏ラベルに書かれている単語だ。

「丹頂鶴さん、いよいよあなたの話よ」

「だけど疲れて頭がくらくらしてきたわ、ははは!」

私はタンブラーに日本酒を継ぎ足し口に運んだ。

その時、机の端に置いた携帯からメッセージの着信音が鳴った。

私が携帯を取ろうと手を伸ばすと傾いた身体は、そのまま椅子から崩れ落ちていく。

「え、なぜ、なぜ」

私の身体はゆっくりと椅子から床に転げ落ち、大きな音が部屋に響いた。

どこも痛くは無かった。

しっかり握りしめた携帯には、親友の ”茉莉(まつり)” からのメッセージが届いている。

私は、床に仰向けのまま届いたメッセージも読まずに返信した。

「身体が変だ。床に落ちた」

携帯に着信だ。茉莉だ。

「もしもし、旅奈、大丈夫なの、どこで何をしているの?」

「家で日本酒を飲みながら日本酒を調べている」

「どのぐらい飲んだの」

机の上のボトルの中身は殆ど無くなっていた。

これって、私、酔っ払っているんだ。

血液が脈打って流れる音が聞こえる。頭が少し回る。

「もしもし、茉莉、私酔っ払った。ははははー」

「旅奈、大丈夫なの?一人で飲んでるの?どのぐらい飲んだの?いつから飲んでるの?」

茉莉の矢継ぎ早の質問に戸惑う。

時計を見ると1時間ぐらいが過ぎていた。

「ははは、1時間ぐらいで日本酒のボトルを一本空けちゃった」

「”ははは”じゃないわよ。旅奈の酔っ払った姿を見たことが無いから、これから見物に行くわ」

茉莉は私に何かあると必ず「これから会いに行く」と言ってくれる。

「大丈夫よ。ドキドキが収まってきた。私、今日初めて日本酒をちゃんと飲んだの、日本酒ってとっても美味しいのね」

「本当に大丈夫なの?ちゃんと寝なさいよ。今度その美味しい日本酒、一緒に私の家で飲みましょうよ。酔っ払っても私が介抱してあげるから」

「そうしよう!ありがとう。おやすみ」

なんとなく幸せな気分だった。


次の日、いつもより早く目が覚めた。

床でそのまま寝てしまった身体が少し痛い。気分はすっきりしている。

携帯に電源を入れると茉莉の昨日のメッセージが現れた。

「日本酒のペアリング会に行かない?」と書かれていた。



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